作曲科の活動ブログ

【レポート】作曲家チナリー・ウン教授のレクチャーとミニコンサート。

2015年11月13日〜14日にかけ、アメリカ合衆国・UCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)から、チナリー・ウン教授(DP; Distinguished Professor)が来学されました。ウン教授は、グロマイヤー賞を含む多くの賞を受賞され、世界的に活躍されている作曲家です。14日には、ウン教授とともに多年にわたり音楽活動を続けておられる、ご夫人でヴィオラ奏者のスーザン・ウン先生も来学されました。今回の一連のイベントは一般公開となっており、学外からも多くの方にご来場いただきました。
 13日には2時間にわたるマスタークラスが開かれ、2名の大学院生が自作に関するプレゼンテーションを行いました。カンボジアン-アメリカンであるウン教授は、とくにアジアの歴史や伝統をめぐる観点から、各作品についてのコメントをされました。美学的な見地からの指摘も多く、作曲のプロセスやコンセプトの根幹に関わる議論がなされました。
 翌14日には『自作を語る』と題し、ウン教授がご自身の作曲活動についてレクチャーを行い、会冒頭ではスーザン先生が《Spiral XI: Mother and Child》(アンプリファイド・ヴィオラと声のための)を実演されました。演奏者が楽器を弾きながら同時に歌うという独特のスタイルは、民俗音楽にひろく見られる弾き語りをヒントに、ウン教授が多くの作品のなかで実践されているものです。今回演奏された《Spiral XI》のテキストは、クメール語、サンスクリット語、さらにはラテン語に模した断片などを含み、幅広い歴史性と宗教性をバックグランドに持っています。レクチャーでは、クメール文化の宗教美術、とくに蛇神ナーガの姿や寺院の建築様式などが紹介され、それらの構造がどのようにカンボジアの伝統音楽と関わりを持ち、またウン教授の作品へ取り込まれているかが解説されました。その後質疑応答の時間が設けられ、ウン教授とスーザン先生へ、カンボジア音楽の特性や演奏に際しての考え方などについて、活発に質問がなされました。
 会の最後に、”弾き語り”スタイルのヴィオラをソリスト的に起用した《Singing Inside Aura》(室内アンサンブルのための)が紹介され、作曲専攻の学生は楽譜も見ながら、演奏の録音に聴き入りました。その後ふたたび持たれた質疑応答の時間では、ウン教授の音楽観について、あらためて質問がなされました。
 私の音楽はカンボジア音楽でもなければ西洋音楽でもない、私自身の音楽である——あえて言うのなら、”futuristic folk music”(未来の民俗音楽)と呼んでもらいたい。そんなウン教授のお言葉が、強く印象に残りました。

チナリー・ウン教授とスーザン・ウン先生を囲んで ウン教授とスーザン先生を囲んで(クリックで拡大)

(文責:M2年 武藤)

2015
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