作曲科の活動ブログ

[レポート] 第五回山本門下試演会

6月17日、愛知県立芸術大学 中リハーサル室にて、第五回山本門下試演会が行われました。
山本門下試演会では、これまで特定の作曲かの作品をテーマとし、そこから各人がインスパイアされて生み出した作品を発表してきましたが、今年はアイロス・ハーバの2本のヴァイオリン作品をフィーチャーし、「微分音」をテーマに取り上げました。それぞれの出品者が微分音をどう捉え、向き合ったか。ヴァラエティー豊かな試演会となりました。

一つ目の作品は井手上和央作曲の「微分音初心者のための微分音小品集 for Harp Solo」。タイトルの通り、微分音初心者のためのレクチャーのようなハープソロ作品。Lessonと題した四つのセクションで様々な微分音と12平均律との聴き比べを行いました。作品の最後にはちょっとしたオチもあり、聴く者に微分音とは何かと考えさせられ、今回の試演会の一曲目に相応しい作品となりました。

二つ目の作品は林ひかり作曲の「Portanon」。フルート、ヴァイオリンとキーボードによる編成の作品です。無数の微分音ポルタメント奏法によって一括で表現できるのではないか、という作曲者の考えに基づき、ポルタメント奏法を効果的に用いて作曲されました。フルートの息遣いの中から生まれるポルタメント奏法、ヴァイオリンの弦の艶かしいサウンドのポルタメント、キーボードの電子音による機械的で不気味なポルタメントが織りなすアグレッシブな作品でした。

三つ目の作品は金森詩乃作曲の「歪 ~ピアノとファゴットの為の~」。微分音を「音程」として扱うのではなく、音の揺れの中で平均律と微分音が織りなすズレや不安定さをテーマに作曲されました。平均律(ピアノ)と微分音(ファゴット)が醸し出すハーモニーが時には歪み、時には調和し、音響が刻々と形を変えていく作品でした。

四つの目の作品では山本裕之准教授作曲の「輪郭主義・ミニ(2012)」。この作品はヴァイオリンとピアノによる編成で、震災義援音楽配信プロジェクト「ヒバリ」のために2012年に作曲されました。ヴァイオリンとピアノの対比された音響が、強さの中に繊細なニュアンスを生み出し、引き込まれる作品でした。

五つ目の作品は今回の試演会のメインとなるアロイス・ハーバ作曲の六分音システムによる二つのヴァイオリンのためのデュオ Op.49(1937)」。全五楽章が演奏されました。民族音楽を彷彿ととさせるようなメロディアスなラインに六分音が組み込まれた楽章や甘美で抒情的な楽章、特徴的なpizz.を巧みに使用した楽章、対位法的な楽章、繊細な音色の響きのぶつかりがエネルギッシュな楽章など、各楽章で六分音が生み出す様々な空間を楽しめる作品でした。

六つ目の作品は波立裕矢作曲の 「提示部 Ⅰ “meets Rachmaninov”」。提示部シリーズと題した作品群の第一作目にあたるこの作品は、ラフマニノフをはじめとする有名な作品から引用素材と自身が作曲した音楽とそれぞれをパッチワークのように繋げる方法論が取られています。クラリネットとピアノが織りなす引用素材と時にはぶつかり、時には調和し、コーダでは微分音とピアノとのコミカルな対比がユニークな作品でした。

七つ目の作品は椎葉ふう香作曲の「three-dimensional shapes」。タイトルは直訳すると三次元形状という意味ですが、この作品においては”立体”と意訳され、点、線、面の三要素から生まれる音響(この作品において発生される音群)を立体として捉え、それらを組み合わせて音楽とした作品です。弱々しく「線」のような音楽から始まり、線がゆらぎ、「点」「面」そして「立体」が形成されていくような作品でした。

八つ目の作品は丸山隼葉作曲の「語り部の急襲 1. 語り部の登場 2. 語り部の急襲」。作曲者が考えた架空の世界を舞台とした音楽で、ゲーム音楽のような明るいサウンドの中に音響的効果として微分音が使われおり、曲の最後のクライマックスは下がり続けるピッチやそれとは比例するように上がり続ける音圧で圧巻させました。

本学では作曲専攻生らによる演奏会や各門下生による演奏会など、積極的に行われています。
どうぞお気軽に足をお運びください。

山本准教授、門下生および奏者の方々 山本准教授、門下生および奏者の方々(クリックで拡大)

(文責:M2年 土屋)

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