作曲科の活動ブログ

【レポート】狂い咲き(2015年度)

2016年2月9日(火)、愛知県立芸術大学大合奏室にて、『作曲作品演奏会狂い咲き』が開催されました。『狂い咲き』は毎年年度末に作曲専攻生有志により行われる新作初演会です。今年は学部生、院生合わせて7人の新作が発表されました。

最初に発表されたのは、金森詩乃さんによる《こぼれ落ちた時間》です。マラルメ Stephane Mallarme (1842-1898)の詩の構造を取り入れた室内楽作品でした。一音一音が鋭い緊張感のもと演奏され、短いスパンに構築された音響と、その音響自体の時間の流れとの対比が重要視された、非常に思考の深い、詩的な作品でした。
次は、井手上和央さんの《接触》です。この作品ではモティーフの変化ではなく、接触しながら次々と現れるモティーフそのものを楽しめました。1シーン毎に新たなモティーフが印象的な場面を創り上げ、聴き手を飽きさせない作品となっていました。
続いて、藤田弘文さんによる《雨脚の強い日には》が発表されました。「手の込んだ息抜きとして」作曲され、まるで絵画を見ているようなホッとした一息を感じさせるような作品でした。チェロの深く、豊かな音色を全体を通して楽しめました。
4番目の作品は安元麦さん作曲の《苗》です。萩原朔太郎の詩集『月に吠える』の中の一篇に安元さんの響きが合わさった、非常に深みのある、上品な作品でした。詩の短さに比例して作品自体も簡潔にまとめられていましたが、透明感のある音の響きを十分作中にて表現していました。
5曲目は藤田将弥さん作曲の《「個」》。とある詩よりインスピレーションを受け、手掛けた作品だそうです。引きこもりが社会の騒音に負けず外へ飛び出す、といったストーリーに基づいているそうですが、作中に表れる幾多もの狂気じみた音響の混ざり合いに、スタイリッシュな一面も感じることのできる作品でした。
6曲目は阿南聖也さんによる《虚無感Ⅰ》。一曲を通して無展開な作品でしたが、合間に表れる様々なノイズ音にいつの間にか注目してしまう。そしてさらに、また次の展開を期待してしまう。しかし、何も残らない。まさに虚無感を感じさせる作品でした。
7曲目は後藤成美さん作曲の《Primitive Chronostasis》でした。「ふと時計を見ると秒針が一瞬止まって見える」という感覚のことをChronostasis(クロノスタシス)と言うそうです。常に感じているはずの一定の時間の流れを音価やリズムによって狂わされる、新しい感覚を楽しめる作品となっていました。
以上、有志7名の作曲専攻生による『狂い咲き』は例年にも劣らない、個性溢れる演奏会となりました。
今後とも、機会がありましたら作曲専攻演奏会にご来演ください。

(文責:M2年 上原)

2016
【レポート】狂い咲き(2015年度)
[レポート]とめクラス試演会2016
ユハ・コスキネン プロフィール
[レポート]電子音楽スタジオスペシャルコンサート